「こどもの日」として広く知られている5月5日は、端午の節句を祝う大切な日です。
5月5日といえば、男の子たちの健やかな成長と将来の幸せを願う日として、各地で様々な風習が受け継がれています。
中でも五月人形の飾り付けは欠かせない風習の一つであり、節句を象徴する重要なアイテムです。
これらの人形は美術品のような精巧さを持ち、価格も幅広く、10万円から30万円前後のものが一般的に選ばれています。
初めて男の子が生まれた家庭では、長男の節句を祝うために特別な五月人形を用意することが多いですが、その後に弟が生まれた場合はどう対応するか、悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。
何故なら、五月人形は「その子だけの守り」としての意味を持っていることから、他の兄弟への使い回しは避けた方がよいとされていたりするので、準備をする際は配慮する必要があるからです。
本記事では、五月人形の文化的な背景や意味合いに加え、兄弟がいる家庭での節句の迎え方などについて詳しく説明していきます。
室内用と屋外用に分かれる五月の飾り
五月人形には、屋内に飾るものと屋外に飾るものの2種類があるのをご存じでしょうか?
それぞれの飾りに、どのような違いがあるのかをチェックしておきましょう。
屋内飾り
室内に置かれる飾りには、主に以下のようなものがあります。
・軍配、太刀、弓矢などの道具類
・陣羽織(戦国武将が着用した羽織を模した装飾)
・歴史上の武将(源義経・弁慶・真田幸村など)を模した人形
・金太郎や桃太郎などをモチーフにした人形
これらは江戸時代の武家文化にルーツを持ち、戦の際に身を守る装備であった鎧や兜が、やがて「子どもを災いから守る」象徴と見なされるようになりました。
屋外飾り
一方で、外に飾られる代表的なものが「こいのぼり」でしょう。
ベランダや庭先に揚げるこの飾りには、困難に打ち勝って力強く育ってほしいという願いが込められています。
その背景には、滝をさかのぼり天に昇って龍になるという鯉の伝説があり、こいのぼりはまさに成長の象徴として親しまれています。
なお、五月人形や飾りは、一般的に母親の実家、つまり妻の両親が贈ることが多く、孫への贈り物として選ばれるのが慣習となっています。
これは、離れて暮らす家族に会いに行くためのきっかけづくりとしても用いられる、温かな習わしの一つです。
兄弟で五月人形を共用しないのは何故なのか?
同じ五月人形を兄弟間で使い回すことは、あまり推奨されていません。
では、新しい命が家族に加わった時、どのように五月人形を用意するのがよいのでしょうか。
五月人形が広く浸透したのは江戸時代とされ、当時は特に男子の成長や家の継承に対する意識が強く、節句にまつわる儀式にも大きな意味が込められていました。
なかでも、兜や鎧には「子どもの身代わりとなって災厄を引き受ける」という役割がありました。
そのため、それらを他の子どもに引き継ぐことは「厄まで受け継いでしまう」として敬遠されてきたのです。
こうした背景から、五月人形は基本的に一人ひとりに用意され、成人するまで大切に保管されるのが一般的でした。
やがて成長して独立した後は、自宅で保管し続けるか、あるいは神社やお寺にて供養してもらうという形で役目を終えることになります。
そのため、兄弟間で共有するという考え方は、昔ながらの価値観にはなじまないものでした。
とはいえ、現代では住宅事情や収納スペースの問題、さらには人形の価格による経済的な負担など、現実的な課題も少なくありません。
こうした背景もあり、最近では伝統にとらわれすぎず、家族ごとのライフスタイルに合わせた柔軟な対応が増えつつあります。
「必ず新品でなければならない」という考え方も、時代の流れとともに次第に和らぎ、多様な節句の祝い方が受け入れられるようになっています。
兄弟がいる家庭での節句飾りの工夫
複数の男の子がいるご家庭では、端午の節句の祝い方にも様々な工夫が凝らされています。
例えば、以下のような方法が見受けられます。
・一つの五月人形を家族で共有しつつ、兄弟一人ひとりの名前を刻んだ札やプレートを添える方法
・代々の想いを受け継ぐという意味で、父親がかつて飾っていた五月人形を活用する家庭もあります
・次男以降は大掛かりな飾りは控えつつも、他の節句飾りや行事食などでお祝いの気持ちを表すやり方
どの方法も、「兄弟みんなが平等に祝われている」と実感できるような配慮が込められており、家族の形や考え方に合った祝い方を大切にしていることがうかがえます。
まとめ
今回は、五月人形の文化的な背景や意味合いに加え、兄弟がいる家庭での節句の迎え方などについてまとめました。
五月人形は、男の子の健やかな成長を願う大切な節句飾りのひとつですが、「一人に一つ」という昔ながらの考え方に必ずしもこだわる必要はありません。
伝統を大切にしながらも、現代の暮らしや家族の事情に応じて、柔軟に取り入れていくことが大切です。
飾り方や用意の仕方にはさまざまな選択肢があり、どの方法が正解というわけではありません。
それぞれの家庭で話し合いながら、その家らしい形でお祝いすることこそが、一番の喜びにつながります。
何よりも、子どもたちの未来に希望を込めて、心から成長を願う気持ちを大切にしていきましょう。