浄土真宗の法要、報恩講、お盆などの仏事では、「御華束(おけそく)」と呼ばれる供え物が欠かせません。
とはいえ、「御華束(おけそく)」が具体的に何なのか、どこで手に入るのか、どのように用意すればよいのか、よく分からないという方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、浄土真宗の信仰を実践するうえで知っておきたい「おけそく」について、その意味や由来、盛り付け方まで詳しく解説していきます。
「御華束(おけそく)」とは何か?
浄土真宗では、丸餅を積み重ねた供え物を「御華束(おけそく)」と呼び、法要やお盆の際に仏前へ供えます。
この供え物は、仏さまへの敬意や感謝の心を表すだけでなく、参拝する人々の心を清らかにする象徴的な存在です。
「御華束」は漢字で「御華足」や「御花足」と表記される場合もあり、読み方は「おけそく」または「おけぞく」と読みます。
地域や慣習によって呼び名や表記などが異なることもあるため、ご注意ください。
名称の由来について
もともと「華束(けそく)」とは、供物を載せる台や器のことを指していました。
その上に常に餅が置かれていたことから、やがて餅そのものを「御華束(おけそく)」と呼ぶようになったと伝えられています。
現在も、一部地域では器の呼び名として残っていますが、多くの寺院では白餅を積み重ねて「御華束」とし、時には赤や青の食用色素で彩りを加えることもあります。
美しく整えられた丸餅の姿は、まるで花束のような美しさと華やかさを感じさせます。
「報恩講」という風習の意義について
「御華束(おけそく)」が特に用いられるのは、浄土真宗の最も大切な行事のひとつである「報恩講」です。
「報恩講」は、宗祖・親鸞聖人の命日に合わせて行われる法要で、旧暦の11月28日を基準に、新暦では1月16日前後に営まれることが多いです。
・講:仏教の教えを聴き、学びを深める場
「報恩講」の季節は花が少ない冬であるため、餅を色鮮やかに飾って花束のように見せる風習が生まれたといわれています。
仏前には香炉・花立・燭台から成る「三具足」や「五具足」を備え、線香や花、灯明を供える「香華灯明」が行われます。
これは、仏様だけでなく、先祖や故人への供養としても大切な作法です。
重要な法要を迎える際、お寺では地域の人々が集まり、「御華束(おけそく)」作りに取り組みます。
丸餅を丁寧に積み重ね、色を添えながら、仏前を荘厳するための供え物を仕上げていく作業は、信仰と地域のつながりを深める大切な時間でもあります。
「おけそく(御華束)」の価格や入手方法について
かつては、「おけそく(御華束)」を町の和菓子屋や百貨店で気軽に購入できましたが、近年では浄土真宗の寺院が指定する限られた店舗のみで取り扱われることが多くなっています。
もし地元で見つからない場合は、オンライン通販の利用が便利です。(特に報恩講やお盆などの繁忙期は品切れになることもあるため、早めの手配が安心です。)
・賞味期限を事前に確認し、希望の配達日に合わせて注文する
・法事などでは戒名入りの短冊を同時に用意できる場合がある
・納期はおおむね1週間前後が目安。日程が決まったら速やかに注文すること
最近では、生餅の代わりに落雁や砂糖菓子を真空パックにしたタイプの御華束も普及しています。
これにより保存性が高まり、行事当日まで品質を保つことができるという利点があります。
一方で、家庭で手軽に準備する方法として、市販の丸餅(例:サトウの切り餅丸型)を使う人もいます。
スーパーで入手できるため便利ですが、形を整えて高く積み上げるのはやや難しいことがあります。
市販の丸餅を活用する場合は、低めに重ねることによって、見栄え良く飾ることが可能です。
「御華束(おけそく)」の盛り付けと飾り方の基本
浄土真宗で仏前に供える「御華束(おけそく)」には、地域や寺院ごとにさまざまな盛り付けの方法があります。
この項目では、代表的な盛り付けのスタイルや、自宅で実践できる飾り方のポイントなどをご紹介します。
主な盛り付け方法の種類
「御華束(おけそく)」の種類としては、以下のような方法があります。
・杉盛:段ごとに餅の位置をずらしながら重ね、杉の木のような尖った頂点を作る方法。
・串盛:餅を串に通して盛り付ける形式。
・段盛:丸餅と板餅を交互に重ねる盛り方で、上段に餅、中段に菓子、下段に果物を供える地域もある。
・直盛(じきもり):芯や支えを使わず、直接餅を積み上げる手法。
これらの方法は、十分な餅の量と広い飾りスペースが必要になるため、お寺では見られても一般家庭で行うのは難しい場合があります。
家庭での飾り方
家庭では、より簡易的で扱いやすい方法が主流です。おけそくの飾り付けに厳密な数の決まりはなく、奇数・偶数を気にする必要もありません。
おけそくの飾りつけを行うにあたって、最も大切なのは仏壇や仏具との調和を意識することです。
形の例としては、三角形になるように段を作る方法や、下に4つ・上に1つを置く二段式などがあります。
最近ではお店に注文するケースも増えていますが、伝統を重んじて自宅で手作りする家庭も少なくありません。
とある寺院の住職のブログでは、熨斗餅を花型に抜いて積み上げ、その上に御華束を飾る例が紹介されており、手作り派の参考になりそうです。
半紙を敷くかどうか
おけそくを供える際は、浄土真宗では「供笥(くげ)」と呼ばれる器を使います。丸餅を置く場合は、餅が器にくっつくのを防ぐため、半紙を敷くのがおすすめです。
ただし、落雁や砂糖菓子など包装された御華束であれば、半紙を敷かなくても問題ありません。
供笥には金色のものや絵柄付きなど多様なデザインがあり、仏壇の大きさや雰囲気に合わせて選ぶと良いでしょう。
安価な製品はプラスチック感が強く見えることもあるため、見栄えを重視するなら選定は慎重にしましょう。
おけそくは、以前は餅屋や和菓子店で容易に手に入りましたが、現在では入手先が限られています。
Amazonや楽天市場などの通販ストアも活用できるため、行事の日程に合わせて余裕を持って準備すると安心です。
飾り方に決まった形はありませんが、地域ごとの慣習がある場合もあるため、迷った時は菩提寺に相談するのが最も確実です。
まとめ
浄土真宗で用いられる「御華束(おけそく)」は、丸餅を積み重ねて仏前に供える伝統的な供物で、法要や報恩講、お盆などの場で欠かせない存在です。
地域や寺院によって呼び名や盛り付け方が異なり、須弥盛・杉盛・段盛など多彩な形があります。
近年は餅の代わりに落雁や砂糖菓子を用いた長期保存型も増えており、入手先は寺院指定の店舗や通販が主流です。
飾り方に厳密な決まりはありませんが、仏壇や仏具との調和を意識し、地域の慣習に沿うのが望ましいでしょう。
行事前には余裕をもって準備し、不明点は菩提寺に確認することで、安心して美しいおけそくを供えることができます。