伝統料理であるおせち料理は、現代では当たり前のように作られていますが、各種具材に深い意味が込められているのをご存知でしょうか？
この独自の料理文化には、固有の歴史と背景が存在し、長い年月をかけて発展していき、形づくられてきました。
そのため、「料理にどのような意味があるのか？」や「料理にどのような願いが込められてるのか？」を知っておいた方が、料理のありがたみを感じられるようになるでしょう。
そこで本記事では、おせち料理には、どのような歴史的背景があるのか、そして各食材にどのような願いが込められているのかなどについて説明していきます。
おせち料理の起源について
おせち料理は古代日本から始まっており、弥生時代にまで遡ると考えられています。
この時代になると、稲作が導入され、米を中心にした食文化が確立しました。
農業の成功を神に感謝する儀式が発展し、季節の変わり目ごとに神への感謝を表す食の慣習が生まれました。
中国からの影響を受けた節日の概念が日本のこの慣習と結びつき、「節供」として知られる料理文化が形成されました。
これが、現代では当たり前の文化となっている「おせち料理の初期形態」だとされています。
奈良時代から平安時代にかけては、「節会」と呼ばれる宮廷行事において、この料理文化が取り入れられました。
この時期に確立された節会は五大節会として知られ、その際に供された料理は「御節供」と呼ばれ、現代のおせち料理の名称の起源となりました。
江戸時代になると、おせち料理は庶民の間にも広がり、特に新年の祝いとして定着しました。
そのため、おせち料理は現在でも日本の新年を象徴する伝統的な料理として尊重されています。
お正月におせち料理を食べる理由とは？
お正月におせち料理を食べる習慣は、一見すると「家庭内の女性が炊事から解放されるため」「正月三が日の間に多くの店が閉まるため食材が入手しにくい」という実用的な理由から来ているように思われがちです。
しかし、この習慣の背後には、以下のような深い文化的な意味があります。
2.縁起を担ぐ（新年の幸せを願う）
3.三が日は料理を休む（昔の習慣）
お正月は、豊かな収穫や幸せをもたらす年神様を家に迎え入れる特別な時期です。
この時期は静かに過ごすことが好ましいとされ、料理や派手な家事は控えるべきとされています。
これにより、日持ちするおせち料理を年末に準備し、新年に静かに過ごしながら食べるという習慣が確立されました。
おせち料理の種類と象徴的な意味
お正月のおせち料理は、重箱に詰められて提供されるのが一般的です。
重箱には「福を積み重ねる」「幸せを重ねる」という願いが込められています。
明治時代に入ると、このように様々な種類の料理を重箱の中に詰める習慣が、広まっていきました。
重箱の段数は四段重が一般的ですが、地域や家庭などの事情によって異なる場合もあります。
そして、その各段には、以下のように特定の種類の料理が配置されるケースが多いです。
・2の重：「口取り」として、甘味を持つお菓子のような料理。
・3の重：「焼き物」として、主に海産物を焼いた料理。
・4の重：「煮物」として、野菜や山菜を使った煮込み料理。
これらの重に詰められる料理はそれぞれ特別な意味や願いを持ち、新年の食卓を華やかに彩っています。
おせち料理に入っている各食材の意味と願い
おせち料理に使用される各食材は、特別な意味や願いが込められています。
1. 黒豆（くろまめ）
意味：「まめに働く」「健康で暮らせるように」
「まめ（忠実・勤勉）」という言葉にかけて、一生懸命働き、元気に暮らせるよう願う。
2. 数の子（かずのこ）
意味：「子孫繁栄」
ニシンの卵である数の子は、卵の数が多いことから、**「子宝に恵まれる」**という願いが込められている。
3. 田作り（ごまめ）
意味：「五穀豊穣（豊かな実り）」
かつて、カタクチイワシを田んぼの肥料に使っていたことから、**「豊作を願う」**意味がある。
4. 昆布巻き（こぶまき）
意味：「よろこぶ（喜ぶ）」
「こぶ」が「喜ぶ」に通じ、**「家族の幸せを願う」**縁起物。
5. 紅白かまぼこ
意味：「おめでたい」「魔除け」
紅白は慶事の色とされ、紅は「魔除け」、白は「清浄」を意味する。
6. 伊達巻（だてまき）
意味：「知識・学問の発展」
巻物（昔の書物）に似ていることから、**「学問や文化の発展」**を願う。
7. 栗きんとん（くりきんとん）
意味：「金運上昇・商売繁盛」
黄金色の見た目から、**「財運が良くなるように」**という願いが込められている。
8. 海老（えび）
意味：「長寿」
海老のように腰が曲がるまで長生きできるように、という願い。
9. れんこん
意味：「先を見通せる」
穴が開いていることから、**「未来が明るく見通せるように」**という意味がある。
10. ごぼう（たたきごぼう）
意味：「家の土台がしっかりする」
ごぼうは根を深く張るため、**「家や事業がしっかり根付くように」**という願い。
11. ぶり（焼きぶり）
意味：「出世・立身出世」
ぶりは成長すると名前が変わる「出世魚」なので、**「仕事や人生が発展するように」**という願いがある。
12. たこ
意味：「多幸（たこう）」
「たこ」は「多幸」と音が似ているため、**「幸せがたくさん訪れるように」**という意味がある。
13. 鯛（たい）
意味：「めでたい」
「たい」は「めでたい」に通じるため、お祝いの席でよく登場する。
このようにおせち料理の食材には、「健康・長寿・子孫繁栄・商売繁盛・豊作・学問の発展」など、様々な願いが込められているのです。
まとめ
今回は、おせち料理に入っている食材に込められた意味などについてまとめました。
おせち料理は、その具体的な内容については家庭や地域ごとに大きく異なります。
移住や結婚などで異なる文化圏に触れることで、新しい材料や料理スタイルに出会う機会もありますが、それぞれがお正月という特別な時期にふさわしい深い意味を持っています。
新年を迎えた際に家族が集まり、おせち料理を囲みながらその年の目標や希望を語り合うのは、とても素晴らしい風習です。
具材に込められた意味を考えながら、じっくりと味わってみてはいかがでしょうか？
