「収穫した後のトマトが、まだ青くて未熟な状態だったので困った!」という経験はございませんか?
このような時は「自宅でトマトを熟成させることができればいいのに」と思うでしょうが、実はトマトのメカニズムをしっかりと理解すれば、自宅でも未熟な状態のトマトを熟成させることが可能となるのです。
本記事では、自宅でできるトマトを熟成させるためのテクニックと、それを裏付ける科学的原理について解説していきます。
トマトの甘さが増すメカニズムとは?
トマトが自然と甘い味わいになっていくのは、生理的な変化によるもので、そのカギを握っているのが「エチレン」という植物ホルモンです。
エチレンは、トマトに含まれるでんぷん質を糖分に変える働きを持っており、同時に赤色の色素であるリコピンの生成を促します。
その結果、トマトの持っている風味と栄養価の両方が高まっていくという訳です。
エチレンは収穫後も作用し続けるため、糖の生成を加速させることができます。
その過程でトマトの酸味が和らいでいき、甘みが前面に出てくるのです。
トマトの甘さが追熟によって引き出される理由
一見すると固くて甘みのないトマトでも、時間をかけて追熟させることで美味しさが引き出されます。
追熟とは、トマト本来の熟成力を引き出す行為であり、「酸味のある緑の実」を、まろやかな「甘みを持つ赤い果実」へと変化させてくれることを指しています。
その秘密は何かというと…トマト自身が放つ「エチレンガス」という成分にあります。
この天然の植物ホルモンは、トマト内部のでんぷん質を糖へと変換し、酸味を和らげる作用を持っています。
その結果として、トマトの甘さと旨みが、より一層際立つようになるのです。
簡単に追熟できる方法としては、「紙袋の中にトマトを入れて常温で保管する」だけです。
リンゴやバナナなどエチレンを多く出す果物と一緒に入れておけば、熟成がさらに早まります。
少し青みが残っているトマトでも、このように適切に追熟すれば、家庭で甘く美味しい状態へと仕上げることができるでしょう。
トマトを美味しく保つための熟成時のポイント
トマトを上手に熟成させるためには、環境や管理に細やかな注意が必要です。
まず、直射日光が当たる場所や暑すぎる場所などで育てるのは避けておきましょう。
また、表面にキズがあったり、すでに柔らかくなって傷んでいる実は他のトマトに悪影響を及ぼすことがあるため、事前に取り除いておくことが大切です。
熟成中は日々の様子をチェックすることも忘れずに。状態を見極めて、食べ頃を逃さないようにしましょう。
さらに、ほかの野菜と一緒に保管する場合は、トマトから放出されるエチレンガスが周囲の野菜の劣化を早めることがあるため、別々に保存するのが安心です。
未熟なトマトと完熟トマトの明確な違いとは?
トマトの味わいや使い方を最大限に活かすには、熟し具合を見極めることがカギとなります。
市場に並ぶトマトには様々な熟度のものがあり、色や質感を確認することで、ある程度の判別が可能です。
ここでは、未熟なトマトと完熟トマトにどのような違いがあるのかについて説明します。
未熟なトマトの性質
青みの残る未熟なトマトは、硬めの食感で酸味が強く、甘さも控えめです。
リコピンやビタミンCといった栄養成分も、まだ十分には生成されていません。
完熟トマトの性質
赤く熟したトマトは、柔らかな果肉と豊かな甘みがあるという特徴を持っています。
リコピンやビタミン類などを多く含み、栄養価も高く、健康面でもおすすめです。
味わいはまろやかでジューシーなため、サラダや生食にも最適でしょう。
未熟なトマトと完熟トマトを使い分けるポイント
未熟なトマトと完熟トマトは、料理においても役割が異なるので、使用時は気を付けましょう。
生食やトマトソースなどには完熟トマトがぴったりですが、未熟なトマトは酸味を活かしたピクルスや加熱調理に向いています。
ただし、未熟な青いトマトには「トマチン」と呼ばれる成分が含まれており、過剰摂取は避けた方が良いとされています。
少量であれば心配ありませんが、扱う際には適切な量を心がけましょう。
家庭でトマトを甘く育てて熟成させる手順について
手間をかけずに自宅でトマトの美味しさを引き出す方法を紹介していきます。
育てるために必要となる道具や気をつけたい点もあわせて解説します。
道具を準備する
まず、最初に紙袋(通気性のあるもの)を用意しておきましょう。
内部に発生するガスが程よくとどまり、トマトの熟成を助けてくれます。
ビニール袋を使うこともできますが、湿気がこもりやすく、カビや腐敗の原因になるため注意が必要です。
トマトの選別を行う
傷んだり割れている実は避け、健康でしっかりとしたものを選びましょう。
状態の悪い実があると、熟成中に他のトマトにも悪影響を及ぼすことがあります。
紙袋の中にトマトを入れる
バナナやリンゴなど、エチレンを多く出す果物と一緒に袋へ入れておくと、トマトの熟成がさらに早まります。
置き場所の工夫をする
日光が直接当たらない風通しの良い室温(目安は15〜20℃)の場所に置くのがベストです。
高温すぎる環境では熟成が進みすぎて、逆に実が痛む可能性があります。
このプロセスを守れば、青くて硬いトマトも、ご家庭で甘く美味しく仕上げることができます。
トマトを毎日チェックするようにする
トマトを熟成させる際は、熟成の進行度合いも毎日チェックしましょう。
表面が赤くなり、手で軽く押して弾力が出てきたら、それが食べ頃のサインです。
完熟に近づいたトマトは早めに調理するか、適切な方法で保存しておくようにしてください。
なお、冬場は常温保存でも構いませんが、夏場は冷蔵庫に入れて鮮度を保つのがおすすめです。
美味しいトマトを見極めるためのポイント
スーパーや青果店でトマトを選ぶとき、「どれを買えばいいのか迷う…」そんな悩みを解消するためのチェックポイントについてもご紹介します。
このコツを押さえれば、見た目に惑わされずに質の高いトマトを選べるようになるでしょう。
見極めポイント1:色合い
トマトの色は、熟し具合を判断する重要なサインと言っても過言ではありません。
全体が均一に赤く色づいているものは完熟状態に近く、甘みや旨みがしっかりと詰まっています。
まだ緑が残っていたり、色ムラがあるものは熟成が不十分で、酸味が強めです。
生で食べたい場合は、鮮やかな赤色のトマトを選ぶといいでしょう。
見極めポイント2:見た目
見た目の美しさは中身の良さにもつながっていることが多く、ひび割れや黒ずみのあるものは避けるのが無難です。
表皮がなめらかで、傷や割れがなく、艶のあるトマトを選ぶようにしましょう。
見極めポイント3:重さ
手に取ったときに「ずっしり」と感じるものは、水分や果肉が豊富な証拠です。
見た目の大きさに対して重みがあるものは、ジューシーさが期待できます。
見極めポイント4:触感
指先でそっと押してみたとき、適度に弾力があるものは熟度がちょうどよいサインです。
硬すぎると未熟、逆に柔らかすぎると傷みが始まっている可能性があります。
店舗では他の方の迷惑にならないよう、やさしく確認することを心がけてください。
見極めポイント5:香り
よく熟れたトマトは、茎の周辺から甘くてフレッシュな香りが立ち上ります。
香りがしっかりと感じられるトマトは、味わいにも期待ができるでしょう。
ただし、嗅ぐときは周囲に不快感を与えないように配慮しましょう。
まとめ
トマトは、収穫した後も追熟によって味や栄養などが変化していく果実です。
エチレンガスの力を活用することで、甘くてジューシーな完熟トマトに仕上げることができます。
紙袋を使った簡単な方法や、香り・色・重さなどをチェックするトマト選びのポイントを押さえれば、誰でも自宅でワンランク上の味わいを楽しめます。
青みのあるトマトも、丁寧に扱えば甘みがしっかり引き出せるので、すぐに食べずに少し時間をかけて育てるのがおすすめです。
今日からあなたも、家庭でできる“ひと手間トマト熟成術”をぜひ実践してみてください!